月の欠片
『ねぇ、何かお祝いで飲もうよ!』
私がそう言って、シャンパンが用意された。
グラスに手際よく宮川洸太がシャンパンを注ぐ。
『おめでとう。』
二人で静かに乾杯した。
忙しい店内は、ゆっくり話す時間はなくて、
哲也も宮川洸太もお客さんへの対応に追われてる。
私はシャンパングラスの中で浮かび上がる一筋の泡に見とれながら、
色んな事を考えていた。
─同級生とは言え、中学の時はほとんど話した事もなかった。
(まだ知り合って1ヶ月くらいしか経ってないんだなぁ…)
私は今日の自分の行動が不思議で仕方なかった。
普段から気前がいいほうではなかったから、
仲の良い水商売の友達の誕生日にもほとんど顔を出さなかった。
(私、なんで一人で誕生日お祝いするくらいにまでなってんだろ?)
偶然会った店でかわした【約束】のため?
(わかんないなぁ…)
また自然と目は宮川洸太を追っていた。─
『梨花、退屈してないか?』