月の欠片
話しかけてきたのは哲也だった。
『うん、大丈夫。』
私が言うと、
『そういえば俺さ、配属先決まったんだ。』
哲也が続ける。
『圭輔くんと一緒に、系列の新規でオープンするパブに行く事になったんだ、圭輔くんが代表だし良かったよ。』
哲也は安心したように言った。
『そっかぁ良かったじゃん、いつ頃オープンするの?』
『うーん、多分…来月の中旬くらいかなぁ〜、お祝いしに来いよっ!』
『考えてとくよ。』
それだけ言うと、また哲也は席を外した。
チラっと時計を見ると、深夜も3時をまわっていた。
(そろそろ帰ろうかなぁ〜)
そう思っていると、宮川洸太が目の前に来る。
帰る事を伝えようとした私の声より先に、
『リカ、携帯の番号教えて?』
宮川洸太の思いがけない言葉に目を丸くして、瞬きを10回くらいした。