月の欠片
客席へ着くと、見慣れた顔がいた。


『あれぇ?圭輔くん?いらっしゃいませ〜どうしたの?』



『おぅ梨花ちゃん久しぶり〜!』



圭輔くんに会うのは、哲也に再会した日以来だった。


『哲也から聞いてると思うけど、新店の代表やることになったから挨拶に…』



(あっ!そっかぁ〜もうすぐか…)



渡された案内状に目を通す。



『来週の火曜日かぁ…もうすぐだね〜』



『おぅ、忙しくって挨拶遅くなっちゃってわりぃな。』



『いいよぉ、お祝いしに行くからね〜!!』




『いらっしゃいませぇ〜』


声がして振り返ると、愛美が席に着いた。



『圭輔くん、新しく入った愛美ちゃん』



圭輔くんに紹介する。



『あっ!愛美です。…よろしくお願いします』



愛美が名刺を渡して圭輔くんの前に座った。



『愛美ちゃん?可愛いね、いくつ?』



『はっ…20歳です』



愛美の顔を見たら、真っ赤になっていた。



照明が暗いから、多分圭輔くんは気付いてないと思うけど…



(まさか…愛美ってば一目惚れ?)



『愛美ちゃんも良かったらお店来てよ』



そう言って圭輔くんは愛美にも案内状を渡した。



愛美は目を輝かせて、


『はいっっ!絶対行きますっっ!』


そう答えると、私の顔を見て、


『梨花さぁん、連れてってくれますよね??』


って今度は目をウルウルさせて言ってきた。




その姿があまりにも可愛くて、思わず笑ってしまった。



『ひどーい!圭輔さんも梨花さんもなんで笑ってるんですか〜?』



今度は顔をプゥと膨らませてすねてる。



私達はずっと笑ってた。



(愛美がいるとやっぱ楽しいなぁ〜)



アッと言う間に時間が過ぎていた。



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