月の欠片
『お疲れ』
二人だけで交す乾杯。
なんだか嬉しくて舞い上がっていた。
ギュウギュウ詰めの店内は、
洸太との距離を縮めてくれた。
腕が触れ合うくらいの距離。
耳元で話さないと聞こえない会話。
笑い合う度に触れる手。
騒がしい店内の様子も全く気にならないほど、
ドキドキしながら、洸太の顔しか見ていなかった。
『シャンパンでも飲もうか?』
洸太が、哲也と圭輔くんを呼ぶ。
二人は忙しい中でたくさん飲まされたのか酔っ払っていた。
せっかくシャンパンで乾杯しても、
あちこちでシャンパンのグラスが置きっぱなしになっていて、
私達のシャンパンにも、ほとんど口をつけなかった。