月の欠片

私は哲也に電話してみた。


『…梨花?』


哲也は寝惚けた声で電話に出た。


『ゴメンね、圭輔くんってどこにいるか知らない?』

『俺、昨日潰れちゃって…気付いたら帰って寝てたんだよな…』


『・・・じゃあ、連絡取れたら電話して!』



(も〜役立たずなんだから!)



愛美はガッカリして肩を落としていた。


『店で寝てるかも知れないから、一度見に行ってみよ?』


落胆している愛美を励まして、タクシーで店に向かった。




店に着くと鍵がかかっていて、中には入れなかった。


(…どうしよう)



途方に暮れていると、酒屋さんが配達に来ていた。


(ラッキー!!)


事情を話して中に入る。




『圭輔!!!』


愛美が突然叫ぶ。




テーブル席のソファに圭輔くんはいた。



(やっぱり…良かった…)




愛美は安心したのか、また泣き出していた。



圭輔くんは寝惚けて意味がわからない様子だった。


愛美が冷たい水を用意して圭輔くんに飲ませてる。



『愛美?何でここにいるの?』


『もぉ!本当に馬鹿なんだから!!!』



圭輔くんは泣いている愛美の頭を撫でて、謝っていた。




圭輔くんが私に気付いて、

『あれ?何で梨花までいるの?』

と聞いてきた。



何だか気が抜けて笑ってしまった。


愛美と圭輔くんも思わず笑っていた。




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