月の欠片
なんとか寝ないで仕事に向かった。
夕方に洸太から電話があって、無事だったことを報告した。
店に着くと愛美も遅刻しないで出てきていた。
『梨花さん、今日は本当にありがとうございました…梨花さん、洸太さんと一緒にいたんですよね?なのに来てくれて…嬉しかったです』
『……えっ?なんで…』
私達はいつものように非常階段で煙草を吸っていた。
『だってぇ梨花さん、家に来てくれた時、昨日と同じ服だったじゃないですかぁ』
愛美がクスクス笑って言った。
『あっ!!』
(しまった〜そこまで頭まわってなかったなぁ…)
『大丈夫ですよ、圭輔には気付かれてないですから』
愛美は笑っていたけど、私が何を言いたいのかわかってくれていた。
『愛美には話そうと思ってたんだけど…先に言われちゃったね』
(愛美にはかなわないな…)
『私、余計な事話したりしませんから…圭輔は知らなくていい事だし』
『ゴメンね、隠し事させるみたいで…』
『大丈夫ですよぉ!今日、迷惑かけちゃったしお互い様ですから…』
愛美は時々、妙に落ち着いていて
ドキっとするくらい大人だと感じさせる部分があった。
『ありがとう』
愛美にわかってもらえて、話せる相手がいてホッと安心した。