月の欠片
愛美の過去
─あの日以来、ほとんど毎日
仕事前か終わってから洸太から電話が入るようになった。
私からも電話しやすくなった。
愛美と圭輔くんはと言うと、
あれから圭輔くんは真っ直ぐ帰ってくるみたいだった。
私と愛美もやっぱり毎日変わらず非常階段にいた。─
『梨花さん、今日仕事終わったら、いつもの居酒屋行きません?』
『ん〜そだね、最近行ってなかったよね…行こっか〜!!』
洸太の話も非常階段で話しただけで、ゆっくり話していなかった。
彼氏の事とか、愛美に相談したい事でいっぱいだった。
『愛美ちゃ〜ん!新規で指名入ってるよ!!』
ボーイが私じゃなくて愛美を呼びにきた。
(愛美、本当に頑張ってるな…私、そのうち抜かれちゃうかも…)
『…どんな人でした?』
愛美が不安そうな顔でボーイに聞いた。
『歳は40後半くらいで、いかにも金持ってますって感じの人だよ、愛美ちゃんいつの間にあんなお客さん捕まえたの?』
愛美はみるみる顔が青ざめていった。
ボーイに何か耳打ちして店に戻って行った。
『何?愛美、何だって?』
戻ろうとするボーイを引き留めて聞いた。
『よくわかんないすけど、ヘルプ誰も付けるなって言われたんですけど…』
(…愛美?)
愛美の顔からしてただのお客さんではないことは明らかだった。