第一章
僕の一生はどんな感じで始まり、どんなことを思いながら生に終止符をうつのか。始まりというのは、たいてい、幸せな二人の男女が愛し合い、そして命を授かり、なに不自由なく生まれることからなる。僕の場合もそれに等しい。終わりは僕にも、誰にもわからない。わかったとしても人生に面白みを感じないだろう。僕は至って普通の大学生だ。やりたいこと、夢とかあるわけでもない。だから大学にきて、それを見つけにきた。でもそれをみつけるのはそんな安易な考えでみつかるはずがないのである。大学をまじめにいったのは1年生の夏までだった。それからは普通にバイトしたり、彼女と遊んだり、友達と深夜まで飲みまわったり、親からもらう毎月の仕送りやバイト代は泡のように消え、金のない日は家にひきこもり、電気代やガス代を滞納したりなんかしたりして不真面目っぷり全開だ。きっと僕はそれをみつけることなく、卒業し、就職し、結婚してと至って普通の人生を送るのだろう。それが悪いとは思わないが、こんな俺でも他のひととは違う何かがあるはずだと根拠のない自信を密かに感じながら、毎日を過ごしている。心のどこかに不安を感じてはいるものの、楽天的なのか、いや楽天的という立派な言葉でなく、ただ毎日変わらない生活に埋没して、そこから脱することのできないもの、「堕落」に似たものが僕に備わってしまったためにこんな生活でもいいとさせてしまっているのかもしれない。こんな感情を抱いたまま、今、大学3年の夏休みを僕はむかえた。
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