【短編】保健医の憂鬱
その瞬間

私の中の全細胞が
この男に向かって波打った

鼓動が数倍にもなって耳に響く

顔も熱くなったが
これは酒のせいという事にしよう


「ばっ!
バカじゃないの?
余計なお世話よ。


私帰る。」



財布から10,000円札を出して
その場を後にする


背中越しに

「残念。」


と聞こえた気がしたが
無かった事にしよう


急ぎ足で電車に駆け込んだ


飲んですぐの運動はアルコールが回る

よろよろとドアに寄りかかる

なんだったんだろう
あの感覚は…


まさか
私…小松原に惚れた?!



いやいやいや…


それはないでしょ?


だってあの小松原だし


俺様でいつもやる気のない
小汚い小松原だし…



大学から数えて早6年の付き合い
それが今になって…

…ねぇ?



もやもやした気分のまま
私は猛烈に襲ってきた吐き気と戦いつつ
電車に揺られていた
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