龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
確かにそうだった


「ほとんど出かけないんだから十分だもの」


「『十分だった』だよ。今は僕や彩名や友達とも出かけるだろ」


「それはそうだけど、圭吾さんは買いすぎじゃない?」


「そうかな。でも今回は特に僕の買った物を身につけていてほしいんだ。羽竜一族の特別な力ってのはこの土地とそれに属するものに強く作用する。志鶴はここに来て日が浅いから『僕のもの』って印をつけておきたい」


――君を守るために


口に出されなかった言葉が聞こえた気がした。


「分かった」


また上手く言いくるめられた気がするけど


でも


車がお店の駐車場に停まったとたん、あっさり『分かった』と言ったのを後悔した。


「ここ、彩名さんのお気に入りのお店だよね? 前に一緒に来たけどものすごく高いんだよ」


「知ってるよ」

圭吾さんはいとも簡単に受け流した。

「僕にはそれだけの収入はあるんだけどな」


「でも、気が引ける」


「志鶴は僕の婚約者だ。ただの恋人じゃないんだよ。分かってる?」


「うん」


「じゃ、中に入って着替えて僕にありがとうのキスをしてくれ」

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