龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
日暮れからじょじょに暗くなってくると、なんだか心細い気がした。

ずっと圭吾さんの側にベッタリとくっついて、お風呂も大急ぎで上がった。


「圭吾さん、来て!」


洗面所から情けない声で圭吾さんを呼ぶ。


「どうした?」


圭吾さんが来るまで、わたしは頭からバスタオルをかぶっていた。


「髪、乾かして。鏡を見たくないの」


「じゃ、目をつぶっていて」


目をつぶると、圭吾さんがバスタオルを外した。

丁寧にふいてもらって、それからドライヤーで乾かしてもらった。

髪に触れる圭吾さんの指にホッとする。


その後、居間のソファーで圭吾さんの膝に頭を乗せて横になった。

圭吾さんが黙って髪を撫でる。

ふんわりと気持ちよくなってウトウトした。


「いつもこんな?」

悟くんの声がする。


「いいや。かなり神経質になってるみたいだ」

圭吾さんの声。


「かわいそうに」


「報いはきっちりと受けさせる」


今のは圭吾さんの声?

凍りつくように冷たい声


「誰を相手にしてるか理解したら、向こうさんも死ぬほど後悔するね」


「もう死んでいる人間かも知れないがね」


背筋がゾクッっと寒くなって、圭吾さんの膝で身じろぎをする。


「だいじょうぶだよ、志鶴」


いつもの優しい声がして、なだめるような手がわたしの髪を撫でた。

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