龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
圭吾さんに促されて村瀬さんの家の前まで行った。


壁の色が違うんだ

あれから何年もたつんだから壁だって塗り替えてるよね


圭吾さんがチャイムを押す。


インターホンから『はい』って男の人の声がした。


「三田です」

圭吾さんがわたしの代わりに言う。


間もなくドアを開けた村瀬さんを見て、わたしは驚いた。


白髪が目立つボサボサの髪

口元にくっきりと刻まれたシワ

血色の悪い肌の色

眠たげなまぶたの下の充血した目


確かうちの親父と同じ年なのに、村瀬さんははるかに老けて見えた。


「やあ志鶴ちゃん、久しぶり。どうぞ上がって」


玄関から長く薄暗い廊下が続いている。


突き当たりにある曇りガラスの窓のほかに窓はない。


ところどころできしむ床の音。


奇妙な既視感を感じた。


バカね、当たり前じゃないの

ここには何度も来たでしょ?


それでも、何とも言えない気味悪さがあって、わたしは圭吾さんの手に自分の手をすべりこませた。


圭吾さんが指をからめてギュッと手を握った。


だいじょうぶ

圭吾さんがいるもの

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