龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
左側に二階へ行く階段がある。


このドアは納戸

このドアはトイレ

向こうがお風呂場

キッチンへのドア


あの日、わたしは龍を抱えていた。


真っ白い小さな龍

わたしの闘龍のパートナー、シラユキよりも一回り小さくて

名前は?

名前?

――そう、ハク

猫のようにおとなしい龍だった。


村瀬さんが立ち止まって、ドアノブに手をかけた。


わたしは足を止めた。

圭吾さんも立ち止まる。


「志鶴?」


その部屋には入りたくない

入っちゃダメ


だって だって

その部屋にはあの人がいるから


圭吾さんに言いたいのに声が出ない。


――お入り


頭の中で声がする。


――お前はわたくしに逆らえないよ


あの人の声がする。


――さあ、おいで

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