龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
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「これより先は、この羽竜圭吾が三田志鶴への呪詛を代わり受ける」
圭吾さんの声が響き渡る。
わたしの少し先がキラキラ光って、空中から悟くんが床に飛び降りて来た。
小脇に額縁のような物を抱えている。
「うわっ! ひどいよ、圭吾。にわかだってのは分かるけどさ、もうちょっとマシな線を引いてくれない?」
「悪い。探し物はそれか?」
「そうみたい」
悟くんが額縁を持ち直した。
真紅のドレスを身にまとった、黒髪の貴婦人の肖像画だ。
「裏書きがあるよ。『明治十八年 久慈 律(くじ りつ)男爵夫人の像』 これ、あなただよね?」
「小賢しい! その絵を破ったとしても、わたくしに害をなすことはできなくてよ」
「その絵に封じる事はできる」
圭吾さんが言う。
「元々その絵に宿っていたのだろう?」
「わたくしは魔王サタンの忠実なしもべ。お前達ごときに封じられると思うのか」
「分かってないね」
悟くんが肩をすくめた。
「あなたはたかだか外国の邪神の使徒だろう? 僕ら羽竜一族は龍神の子だ。しかも、一族の長はその地位に就く時に、龍神の力の一部を借り受ける――あなたが前にしているのは龍神の力だよ」
圭吾さんはわたしを自分の後に下がらせると、両手を音高く一拍打ち鳴らした。
「久慈律。僕からあなたへの呪詛返しは済んでいる。あなたに知らしめる事により、今この時、呪い(まじない)は成り立った」
圭吾さんの声が響き渡る。
わたしの少し先がキラキラ光って、空中から悟くんが床に飛び降りて来た。
小脇に額縁のような物を抱えている。
「うわっ! ひどいよ、圭吾。にわかだってのは分かるけどさ、もうちょっとマシな線を引いてくれない?」
「悪い。探し物はそれか?」
「そうみたい」
悟くんが額縁を持ち直した。
真紅のドレスを身にまとった、黒髪の貴婦人の肖像画だ。
「裏書きがあるよ。『明治十八年 久慈 律(くじ りつ)男爵夫人の像』 これ、あなただよね?」
「小賢しい! その絵を破ったとしても、わたくしに害をなすことはできなくてよ」
「その絵に封じる事はできる」
圭吾さんが言う。
「元々その絵に宿っていたのだろう?」
「わたくしは魔王サタンの忠実なしもべ。お前達ごときに封じられると思うのか」
「分かってないね」
悟くんが肩をすくめた。
「あなたはたかだか外国の邪神の使徒だろう? 僕ら羽竜一族は龍神の子だ。しかも、一族の長はその地位に就く時に、龍神の力の一部を借り受ける――あなたが前にしているのは龍神の力だよ」
圭吾さんはわたしを自分の後に下がらせると、両手を音高く一拍打ち鳴らした。
「久慈律。僕からあなたへの呪詛返しは済んでいる。あなたに知らしめる事により、今この時、呪い(まじない)は成り立った」