龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
安堵と心配

「ねえ、結局うちの親父は無事だったってこと?」


わたしはアイスクリームのふたを開けながら圭吾さんにきいた。


「そう。村瀬さんに電話する前に、新聞社の山口さんって人にも電話してね。叔父さんからは普通にメールや電話が来てたそうだよ。たぶんうちのネットは例の男爵夫人が何かの小細工したんだろ」


「それ、昨日のうちに分かってたのよね?」


「ゴメン。志鶴はすぐに顔に出るから」


もう、ひどい! わたしが心配してるの知ってたくせに

最高級のアイスクリームなんかでごまかされないわよ

――あ……でも、これ美味しい!


八年前、ママの龍が死んだ時、村瀬さんの奥さんも落雷で亡くなったという。

わたしはそれを目撃していた。

その記憶はない。

思い出さない方がいい記憶だと、圭吾さんも口にしない。

親父は何をどこまで知っていたのだろう?

羽竜家にわたしを預けたのは、このためだったの?

電話やメールできける話でもなく、親父が帰国した時にゆっくり話してもらうしかない。


わたしはアイスクリームをすくって圭吾さんの口に入れた。


「いけるね」

圭吾さんが言う。

「家に帰ったら取り寄せる?」


「なに? そんなに美味しいの?」

お風呂上がりの悟くんが顔を出した。


「悟くんの分、冷凍庫に入ってる」
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