龍とわたしと裏庭で③【黒魔術編】
自然に

ホントにごく当たり前に

わたし達は唇を重ねた。


短いキスを繰り返し、圭吾さんの唇が頬からこめかみへ、さらに首筋へと下りていく。


わたしは少し頭をのけ反らせた体勢のまま

「圭吾さん?」

って呼びかけた。


「ん? 何?」


キスを繰り返しながら圭吾さんが答える。


「わたしって、今、押し倒されてるの?」


わたしの言葉に圭吾さんはピタッと動きを止めた。

それからわたしの髪に顔を埋めると、喉の奥でククッと笑った。


なぁに?


「僕は今、君を誘惑してるんだ」

圭吾さんは顔を伏せたまま、くぐもった声で言った。


「そうなの?」


「あんまり効き目はないみたいだけどね」


「そんなことないわよ」


圭吾さんは顔を上げると、わたしの鼻を軽くつまんだ。


「嘘つき」


圭吾さんは笑ってる。


だけどわたしは笑えなくて、

「わたし、圭吾さんが望むようにちゃんとできてる?」


「志鶴はそのままでいいんだよ」


切ないほど優しく圭吾さんが微笑んだ。



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