九弦堂のザッハトルテ
来た
来てしまった
わたしは愛想笑いを浮かべ
冷蔵庫を開けた
なんだかもう分からない茶色のものが
クンクンクン
匂いは消えた
消臭剤の真横に置いたのが成功したらしい
さも買ってきました感を出すため
皿には移さずに持っていく
「お、お待たせしました」
「これがそうかい?」
「ええまぁ…」
「随分とへしゃげてるねぇ」
「暑いですからー」
ハハハと笑いながら切り分ける
か、かてー‼
刃が入んないし‼
カボチャ並みに固いザッハトルテを削り取り
角砂糖サイズのザッハを姑の前へ
「じゃ頂こうかねー」