九弦堂のザッハトルテ
フォークですくわれる
もう石の固まり
それが姑の口の中に…
「お義母さん‼すみません‼」
ピタリ
石は手前で止まった
「それ違うんです‼」
「違うって?」
「ザッハトルテじゃないんです‼いやザッハトルテなのはザッハトルテなんですけど…」
「九弦堂じゃないのかい?」
「半分は九弦堂で半分が板チョコみたいな」
「板チョコ?」
「とにかくすみません‼せっかくリクエストして頂いたのに、ダメにしちゃったんです」
「遼子さん…」
「なんとか取り繕って誤魔化そうとしたんです」
「遼子さん」
「本当にごめんなさい‼」
わたしは頭を下げた
やっぱり間違ってる
ウソはダメだ
ウソをつけばいつまでも距離は縮まらない
たとえ姑に罵られても本当のことを…
「遼子さん」
「…はい」
「ザッハトルテならあるじゃないか」