だけど、俺は教師でお前は生徒
だけど、澤村にとっては複雑だった。



母親が頼れるのは、自分だけだから……と覚悟を決めていたのに、



母親は自分以外の存在を受け入れたのだから。



“居場所がないよ……あたしの居場所がなくなっちゃったよ”



小さな澤村のその声に、応えられるのは俺だけだと思った。



幸せそうな母親には決して言えない想い。



ずっと、ひとりで悩んでいた澤村。



そうとは知らずに、俺は、連絡をしてこない澤村に苛立ちさえ感じていたんだ。



もっと俺を頼ればいいのに。



“三嶋先生には、いつもの明るいあたしを好きでいてほしいから。だから頑張れる”



電話越しに、ムリして笑う澤村を、



出来ることならすぐにでも抱きしめてやりたかった。
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