だけど、俺は教師でお前は生徒
「新米教師だった俺を温かく見守ってくださり、感謝しています。長い間、お世話になりました」



数週間後、俺は学校を辞めた。



俺の決断に誰もが驚いていた。



“三嶋先生にはこの学校にいてほしい!!”



生徒たちはもちろん、保護者からもかなりの反対意見があったようで、



学校側からは何度も、留まるように説得されたが、



俺の気持ちが変わることなんて、あり得なかった。



最後の勤務の日。



同僚の先生や生徒たちからは、いくつもの色紙や花束をもらった。



堀池先生も目に涙を浮かべながら、



「三嶋先生以上に素敵な人、いつか絶対見つけますから……。お元気で……」



すれ違いざま、俺に小声でささやいた。



「堀池先生なら、きっと見つけられますよ」



俺の言葉に微かに笑みを浮かべた。



教師として、初めて赴任してから今日まで、



思い出すと数えきれないほど沢山のことがあったな。



見慣れた校舎を目に焼き付けるように見渡した。



「三嶋先生っ!! 嫌だぁっ、なんでぇ」



車に乗り込もうとした俺に、数人の生徒たちが校舎の窓から叫んだ。



「じゃあな!!元気でな!!」



俺は、生徒たちに笑顔で大きく手を振り、車のエンジンをかけた。
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