だけど、俺は教師でお前は生徒
「三嶋先生にだけあげるんだからね。あたし、他の男子には頼まれてもあげないもん」



澤村から渡されたのは、かわいいラッピングに包まれたチョコレート。



「なんでだよ、クラスの男どもにもあげればいいじゃん♪きっと喜ぶぞ」



俺がそう言いながら手に取ると、



「これは、先生のためだけに作ったの。昨日は徹夜して作ったんだよっ。他の男子なんか興味ないもん。あたしは先生だけっ」



少しだけ頬を赤くした澤村は、そう言って微笑んだ。



「ふーん。まっ、ありがとな!大事に食べるよ」



教え子から、もらうチョコ。



俺にとっては、なんてことはない、やりとり。



こんなこと……別に珍しくもないし、



本当は面倒なだけで、嬉しくもなんともない。



その時は、そう思っていた俺。



だって、この子は、沢山いる生徒のひとり。



ただそれだけの存在なんだってさ。





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