だけど、俺は教師でお前は生徒
着いたのは、海にほど近い田園風景の広がる静かな街。



車を停め、聞いていた住所だけを頼りに歩いた。



小さなアパートの前で電話をかける。



さっきメールで確認したから、今日は家にいるはず。



“……三嶋先生? どうしたの?”



すぐに聞こえた声に、思わず愛しさが込み上げる。



“ん?? ちょっと美波の声が聞きたくなったから”



俺の一番守りたいもの。



“すごい!! あたしもね、今、先生の声が聞きたいって思ってたんだよ”



“あまりに声が聞きたくてさ、迎えにきちゃったんだけど”



“はっ?? えっ??どういうこと??”



“今、家の前にいる。美波を迎えにきた”



“ちょっ……待って、ホントに?”



急な展開に混乱しているのか、電話の向こうでバタバタとした音が聞こえる。



驚いた澤村が目に見えるようだった。







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