だけど、俺は教師でお前は生徒
「忘れる?? もちろん堀池先生がそう望むのであればそうしますよ」



あえて微笑むようにして俺が言うと、



「はい。そうしてくださいっ。今のは、なかったことに……。それじゃあ、私はやっぱりお先に失礼しますね」



少し慌てたように席を立った堀池先生は、俺に向かってまた頭を下げた。



「それではお先に……」



「あ、はい。お疲れ様です……」



俺は職員室を出ていく堀池先生の後ろ姿に、そうつぶやいた。



いつもの堀池先生とはまるで別人だな。



生徒達の前では、真面目でキビキビとした態度で、



いつだって落ち着いた雰囲気を崩さない堀池先生。



授業でも、たとえ小テストであっても、



妥協することなく厳しく採点することでも有名だったりする。



その堀池先生が、明らかに俺の前で動揺を見せ、顔を赤らめていた。



やっぱり、堀池先生は、俺を??



それを知っても、動くことのない俺の心。



特に何の感情も、動揺もなかった。










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