だけど、俺は教師でお前は生徒
「ごめんなさいっ、泣くつもりなんかなかったのに……」



必死に涙をこらえようと、目頭を押さえる堀池先生。



本気で泣いてるのか、演技でそうしてるのか。



なんだかわざとらしい涙に、思わずイラつきさえ覚えた。



「俺こそ、すいません……本当に……」



「三嶋先生の……気になる人って、私の知っている人ですか?? 教えてくださいっ」



泣きながらも、しっかりと聞きたいことは聞くんだ??



こんな状況なのに、不思議なまでに平常心な俺がいた。



学生の頃までには、俺だって、いくつかの恋愛をしてきた。



その中で、本気で好きになったのは、ただひとりだけだった。



誰かのことを真剣に愛しく思うこと。



けど、いつからか、それが俺にはできなくなった。



そして、今日まで、俺はこうして彼女がいない日々を過ごしている。




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