だけど、俺は教師でお前は生徒
そうだ……あの頃の俺。



少しずつよみがえってくる記憶。



そして、それは俺の心の奥をギュッと痛める。



ただ一途に、ただひたすらに、大事に思えた女。



初めて誰かをこんなに愛しいと思い、愛されたいと願った。



だけど、愛されたくない女には、山ほど振り向かれても、



その女に、俺はすぐに愛されることはなかった。



苦労して貯めた金は、その女に追いつきたいから。



一緒に住みたいと願って必死に貯めた金。



やっと振り向いてもらえたのに、



これから先は俺が幸せにしようと思ってたのに、



その女は俺の手の届かない所へ行ってしまった。



今でもあの痛み、あの胸が張り裂けそうな苦しみを忘れることはない。



忘れようとしても、忘れられず、この瞬間でさえ、



思い出すと愛しさが込み上げる。

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