だけど、俺は教師でお前は生徒
俺のせい……兄貴にとってはすべてがそうだったはずだ。



いっそのこと、もっと殴ってほしかった。



そしたらこの心の闇から抜け出せたのかもしれない。



兄貴の態度は何も変わらなかった。



悔しいほどに紳士で、優しくて大人なんだよ。



海外勤務が決まると、笑顔さえ俺に向けた。



“俺にとって、仕事のチャンスでもある。俺がいない間、父さん、母さんを頼むぞ”



何でそんな風に冷静でいられるのか。



俺は兄貴の大切な女を奪ったようなもんなのに。



俺はきっといつまでたっても、こんな兄貴に追いつくことはないだろうと、



その当時の俺は強く思い、深く嘆いた。
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