だけど、俺は教師でお前は生徒
一瞬にして、表情を曇らせ、下を向く澤村。



そして、何かを決心したかのように俺を見た。



「三嶋先生は、誰かを真剣に愛したことありますか??」



しばらくの沈黙のあと、澤村は小さな声でそう聞いた。



「好きっていうんじゃなくて、愛してるってこと。そんな感情で誰かを想ったことがありますか??」



「そうだなぁ……。まぁ、俺くらいの歳になれば、そんな恋愛のひとつやふたつは経験するもんだけどな」



「……じゃあ、三嶋先生も?」



「まぁな。でも、それがどうしたんだ?」



「あたしにはまだそんな経験がないから、理解しようとしても出来ないんです」



真っ直ぐな目で俺を見つめる澤村。



「……何度も何度も……あたし、お母さんのこと、分かってあげたいって思ってみても、全然……理解出来なくて……分からなくて」



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