だけど、俺は教師でお前は生徒
「そんなんじゃない!!お母さんも、お父さんも、三嶋先生も……みんな、あたしのこと、なんにも分かってないっ」



もうこれ以上は無理か……。



俺自身が今まで築きあげてきたもの。



それを壊してでも、自分の気持ちはごまかせない。



今の俺が願うことは、このひとつだけ。



俺は教師としてではなく、



ひとりの男として、こいつと向かい合いたいってこと。



いつの間にか、俺から離れて両手で顔を覆い、泣いている澤村。



「……三嶋っ……先生っ」



俺は泣いている澤村を腕の中に包み込み、



「泣くな……澤村に泣かれたら困るんだよ」



細くて華奢なその体を抱きしめた。




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