だけど、俺は教師でお前は生徒
「今日でこのクラスにいるのが最後の奴がいる」



俺は澤村に向かって、手招きした。



「おい、澤村、前に来い」



俺の視線の先の澤村に、クラスの生徒の視線が集まる。



「早くっ、こっちに来いって」



なかなか立ち上がらない澤村に、俺はさらに大げさなくらいに手招きをした。



澤村とこうしてこの教室に、この学校にいられるのは今日が最後。



ようやく俺の近くまで来た澤村とやっと目が合う。



本当は今、この瞬間でも抱きしめてやりたい。



澤村にとって、望んではいなかった転校。



それを一生懸命作った笑顔を母親に向け、承諾した澤村。



「澤村、みんなに何か最後の挨拶をしてくれよ」



俺の言葉に、少し顔を強ばらせた澤村だったが、すぐに表情をいつもの笑顔に変えて、



「家の都合で、転校することになりました……」



そう言って、軽く頭を下げた。
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