だけど、俺は教師でお前は生徒
「お疲れ様です。そんなに待ってないですから、気にしないでください」



堀池先生は、俺の正面に座ると、コップに入った水を一気に飲み干した。



「ごめんなさいっ。喉がカラカラで……」



俺の視線に気づくと、少し恥ずかしそうに、



「せっかく三嶋先生と一緒なのに、私ったら……」



と、つぶやき、顔を赤らめた。



たしかに、ジャージ姿にほぼノーメイクの堀池先生。



いつものオシャレな雰囲気とはかけ離れている。



「陸上部の顧問って、案外きついんですよ。夏休みは授業もないし、部活の練習がある日はいつもこんな感じなんです」



「暑いし大変ですよね。ご苦労様です」



「三嶋先生とお会いするなら、着替えの服くらい持ってきてればよかった……お化粧直す時間もなくて……」



額の汗をハンカチで拭きながら、窓ガラスに映る自分の顔を気にする堀池先生。



部活が終わって、すぐにここへ駆けつけたことが分かる。
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