ひとりあがり。

フォーク

「。。。まだ、ワタル君の事、好きなの?」
みほいの真っ直ぐなまなざしがワタシの胸をチクリと刺す。

「そんなんじゃないよ。ただの興味だよ。」

「興味?どんな?」
みほいが立て続けに問い掛けて来る。

「だから。。ワタシと別れて。。ワタルはどんな歌声になってるんだろ?どんな歌を歌ってるんだろ?ってさ。昔付き合ってたヤツがどんだけ成長してんのか知りたいじゃん。」
冷めてしまって硬くなったカルボナーラをフォークでつついた。

「ワタシと別れてワタルがさ、男としてもシンガーとしても、とりあえず、魅力的になっていたら、ワタシの存在価値が見つかるじゃん」

冷めたカルボナーラの真ん中にフォークを突き刺した。

憎らしい程に真っ直ぐに刺さったフォークにワタシは今すぐにでも変わりたかった。

「ね。ジュン。」

みほいが優しくワタシを呼ぶ。

「まだ。。好きなんだね。」

「違う。そんな事ないよ。」

「誤魔化さないでよ。ジュン。ワタシを誤魔化さないでって言うんじゃなくてさ、自分の気持ちを誤魔化さないでよ。」

「違うよ。本当に。もう未練なんてないよ。タダ、久々に懐かしさに動揺してるだけ。」

ワタシは笑ってみせた。

みほいが黙ったままワタシの笑顔を受け止めた。

「。。そう。まぁ、ゆっくり考えなよ。」

「だから、考えることなんて何もないって。」

「。。そっか。」

みほいが残り少ないワインを飲み干した。

ワインの白。

そう言えば、大学入学して最初の新入生歓迎コンパでも、みほいは白ワインを飲んでいたっけ。

あの頃は。
こんなに仲良くなるとは思わなかったな。

「で、着うた。聞いてみたの?」

「。。。まだ。」

「なんで?」

「聞くにはチョット勇気が。」

「どうして?」

「だってあの曲だもん。」

「えっ?まさか。」

「うん。『LOVE.LIFE』なんだ。」

「だってそれって。」

「うん。。ワタシの歌。」
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