ひとりあがり。
ワタシの歌①

ワタシの歌

その日は、朝から降っていた小雨が止んで、少し蒸し暑かった。

デートに遅れた理由なんて、そりゃワタシが女の子だからだ。

前の晩に用意していたブルーのキャミソールは着てみると、ワタシの二の腕の存在を強調してしまっていて、ワタルとのまだ三回目のデートには似合わない服装だった。

お気に入りの白のミュールでは、水溜まりの道を歩くには勇気がいるし、二年前に買った美脚ジーンズは。。

チョット。きつかった。

そんな悩み多きファッションショーをしていたら、約束の時間をとっくに過ぎていた。

西武新宿駅から走ってアルタ前に向かう。

ワタルはガードレールの一番上の段に座り、空を見ていた。

カッコイイ。

チョット。
ワタルの彼女でいられる事が誇らしかった。

「ごめん。市役所で住民票取ってたら遅くなっちゃった」

嘘の言い訳。
本当は昨日、市役所でちゃんと習得済みだった。

「行くぞ。ランチタイムが終わっちまう。」

さっさっと。
ワタルが先を歩く。

ワタシはワタルの歩き方が好きだ。

少し引きずって歩く。

スニーカーの裏は内側だけが早く磨り減る。

なんだか。
ワタルらしい歩き方だと思う。
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