炭酸恋愛【短編】


「今夜、暇?」


 長い沈黙の後、彼が言った。妖艶に口元が歪み、勝ち誇るような微笑を浮かべている。

 考えていることは、同じか。


「いいよ。私も誘おうと思ってた。」


「へぇ、大胆」


 クラクラする。
 私はそんな女じゃなかったはずだ。こんなに軽い男とは付き合わない。

 クスクスと笑いを漏らす、彼の瞳が妖しく光る。ぞくりと背筋が震える。その時、太ももに手を乗せられていたことに気付いた。


「俺の一晩だけの恋人になってよ」


 低音の声はまるで麻薬のよう。乗せられた手の部分が熱かった。気が付けば頷いていて、店を出ていた。
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