スノードロップ
―――五分後

「彰護!」
「おぉ愛実。見てみ、アレ」
「郁…匡斗君。何してるんだろ」
「あ!カフェ入った、行くぞ」
「うんッ」
あたし達は、郁と匡斗君の斜めにある席に座った。二人とも真剣な顔してる…。
「ぶっちゃけ、愛実の事どう思ってんの?」
…え?あたしの話?
「どうって…どうも思ってないよ。俺は郁一筋だから」
「ふぅ~ん」
「いつまで黙ってる気?」
「何を?」
「俺が愛実の思い入りの人って事」
…え?どういうこと?
「ずっと言わないよ」
「何で?友達なのに」
「だって、あいつウザイもん。気持ち悪くない?
小学校低学年の時助けてくれたぐらいで恋に落ちて、
未だに好きって…正直引くわ」
…郁そんなこと思ってたの?あの時謝ってくれたじゃん!
協力してくれたじゃん!あんなの郁じゃない…。郁じゃないよ……。
「可哀想…郁悪魔だね」
「愛実が悪いんだよ、恋愛はそんなに甘くない」
郁…。なんで…なんで…。
―ガタッ―

あたしはいつの間にか走り出していた。気が付くと、近所の河原に居た。
「ここは…」
ここは、私と郁が出会った場所。毎日ここに来て、おしゃべりしたり…。
笑って、泣いて、怒って。
毎日が楽しかった。
この時間が、なにより私の誇りだった。
「愛実?」
「桜來…」
「何で泣いてるの?何かあった?」
「ッッ」
あたしは全部桜來に話した。泣いて泣いて、泣き続けた。
桜來の中で泣いた。桜來は何も言わずにずっと抱き締めてくれた。
「郁の事は気にしないで!」
「ありがと!」
あたしはとびっきりの笑顔で答えた。
多分、今以上の笑顔を見せる日はないだろう。
きっと、きっとないだろう…。
< 6 / 20 >

この作品をシェア

pagetop