保健室の魔法使い
プロローグ〜魔法の呪文
「先生、私先生のことが好きです! 付き合って下さい!」
「無理だから」
私はそのいつもと同じ返事が不服で唇を尖らした。
私は今、4時間目の体育の授業のときグラウンドで転けて怪我をしたため保健室で怪我の手当てをしてもらっているところだ。
保健室の先生――飯田先生は無表情で私の擦りむいた膝小僧をツーンとした臭いがする黄色い消毒液で消毒してくれている。私の気持ちを込めた告白は、全く先生の心には響いていないようだ。
そういう先生のクールなところも私は好きなんだけれどね。
男らしい骨ばった手が私の傷に四角い大きな絆創膏を丁寧に貼ってくれる。
普段はそっけない態度なのに怪我をしたときは優しく治療してくれる様子で、先生はちゃんと生徒のことを思ってくれているんだってことが分かる。そういうのはギャップっていうのかな。そのギャップに私はいつもキュンって来るの。
「何ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪いぞ」
「先生は好い人だなと思って」
「何言ってんだか」
先生は私が褒めても照れる様子を見せず、表情も変わることはない。そういうところは先生のつまんないところ。
先生は何を言っても表情は変わらない。ずっと前に先生の表情が変わるところを見たくて怒らせるようなことを言ったのに、ふーんそれが? みたいな感じ軽くあしらわれた。
先生が大人だったから私の子供じみた挑発は全く気にも触れなかったのかもだけれど、あのときはちょっと寂しかった。
貼り終わった先生は、膝小僧に貼った絆創膏の上から右手を置いた。
先生の暖かい体温が伝わり、何だか心地好い。
「ロエキヨミタイ」
先生はいつも怪我の治療が終わると、最後に魔法の呪文みたいな言葉を掛ける。
最初は変な先生だなって思ったけれど、その言葉を聞くと何故か傷の痛みが引く気がする。でも先生が魔法を使える訳ではないことは知っている。この呪文を逆から読むとイタミヨキエロ。つまり痛みよ消えろという単純な言葉なのだ。
だけど痛みが引く気がするのは気持ちの問題もあるのかも。
「無理だから」
私はそのいつもと同じ返事が不服で唇を尖らした。
私は今、4時間目の体育の授業のときグラウンドで転けて怪我をしたため保健室で怪我の手当てをしてもらっているところだ。
保健室の先生――飯田先生は無表情で私の擦りむいた膝小僧をツーンとした臭いがする黄色い消毒液で消毒してくれている。私の気持ちを込めた告白は、全く先生の心には響いていないようだ。
そういう先生のクールなところも私は好きなんだけれどね。
男らしい骨ばった手が私の傷に四角い大きな絆創膏を丁寧に貼ってくれる。
普段はそっけない態度なのに怪我をしたときは優しく治療してくれる様子で、先生はちゃんと生徒のことを思ってくれているんだってことが分かる。そういうのはギャップっていうのかな。そのギャップに私はいつもキュンって来るの。
「何ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪いぞ」
「先生は好い人だなと思って」
「何言ってんだか」
先生は私が褒めても照れる様子を見せず、表情も変わることはない。そういうところは先生のつまんないところ。
先生は何を言っても表情は変わらない。ずっと前に先生の表情が変わるところを見たくて怒らせるようなことを言ったのに、ふーんそれが? みたいな感じ軽くあしらわれた。
先生が大人だったから私の子供じみた挑発は全く気にも触れなかったのかもだけれど、あのときはちょっと寂しかった。
貼り終わった先生は、膝小僧に貼った絆創膏の上から右手を置いた。
先生の暖かい体温が伝わり、何だか心地好い。
「ロエキヨミタイ」
先生はいつも怪我の治療が終わると、最後に魔法の呪文みたいな言葉を掛ける。
最初は変な先生だなって思ったけれど、その言葉を聞くと何故か傷の痛みが引く気がする。でも先生が魔法を使える訳ではないことは知っている。この呪文を逆から読むとイタミヨキエロ。つまり痛みよ消えろという単純な言葉なのだ。
だけど痛みが引く気がするのは気持ちの問題もあるのかも。