A sweetheart is a ghost
オヤジと目は合いっ放しでオヤジがニコッとしてきた。

潤一をわたしは見てるのに…。

あまりに気持ち悪くて目を逸らした。


「璃那いつもこんな電車乗ってたんだな。すっげーな、人。」


そう言ってウロウロまわり始めた。

相変わらず自由奔放というかなんというか…。


そして会社の近くの駅に着き電車を降りた。


「お前の会社入るの、俺初めてだよな。なんか一緒に出勤してるみたい。」


私服のくせになにが一緒に出勤なのよ。って思ったけどいい独り言みたいになるからもちろん言えない。

いつもの通勤路をカツカツと歩いた。

街中で歩いて5分程で着く。

バスで1駅だからいつも徒歩で向かってる。


「緒方さん!!」

後ろから急に聞こえた声。

振り向くと隣の課の同期の久保くんがいた。

手を振りながらこっちに小走りで来た。


「おはよう。」

そう言うとチラッと潤一を見た。

潤一は久保くんを見つめてる。


「おはよ。緒方さん、大変だったな。もう大丈夫なの?平気?」


会社で結構潤一が死んだってこと有名になってるみたいだな…って実感した。

みんなに今日聞かれるのかと思うと気が重くなった。


「うん、もう大丈夫。ごめんね、心配かけたみたいで。」


「いやいや。大丈夫ならよかった。元気出せよ?」


そう言ってわたしのかばんを持ってくれた。


「いいよ、これくらい自分で…──」


「ええって。疲れてるって顔してる。」


そう言う久保くん。

このやり取りを潤一は黙って見てた。

潤一を見上げると目が合い、そしてニコッと笑って口を開いた。


「璃那、モテるんだな。」
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