A sweetheart is a ghost
会社でもみんなから慰められたけど仕事の量を減らしてくれるわけではない。

並んだ机の一角。

わたしは端っこで隣は営業に出てるから大体あいてる。

そんな場所で経理のわたしは休んでた分、溜まった仕事を黙々とやった。


「璃那、意外と仕事できる奴だったんだ。」


とか微妙な潤一からの褒め言葉を貰いながら。



「緒方さん。」


伝票の整理をしてたら上司の亀川さんが来てわたしの名前を呼んだ。


「はい。」

身体を向けて返事をした。

「今日、みんなで飲み行くけど…どう?気分転換になるかなって。」


こんなことを小声で言う亀川さんは29歳で独身。

合コン三昧で女にだらしないけど優しく、仕事の出来る上司。


「うーん…気分転換…──。」


チラッと潤一を見るとまたニコッと笑った。

行っていいってことだよね??


「みんな心配してるしさ、顔出しだけでもいいしおいでよ。」


「じゃあ…行きます。すみません、気をつかわせて。」


「いやいや、全然。店あとから社内メールで送っとくから。」


そう言って去って行った。

そしてまた伝票を見て電卓に指を置いたときだった。


「思ったけど璃那の会社って男前結構多いよな。」


潤一が喋った。

カタカタと電卓を打つわたしの横でまだ続ける。


「しかも雰囲気もいいし、恵まれてるじゃん。」


そう言って潤一は部屋を散策し始めた。

止めたかったけど名前を呼ぶ訳にもいかないし。


散策を黙ってさせておいた。
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