A sweetheart is a ghost
「あ…。」

言葉が見つからない。

絶対見られてた。


「おかえり。」


小さくそう言って潤一はわたしに背中を向け、階段を登った。

その後ろをわたしも登る。

空気が重い。


部屋に入って電気をつけた。


「あ…あのね、さっきの誤解しないで…」


「いいんだ。何も言わないでいいよ。」


潤一はずっとわたしに背中を向けたまま。

もう…怒ってるくせに…。


潤一の前に回りこんで顔を見た。


「じゅ…えっ…──!?」


それは潤一の姿だけど…ちょっと違う。

わたしの反応を見て潤一もまたわたしに背中を見せる。


「見るな。」

そう言ってこっちからは見えないのに手で顔を隠し、また部屋を出て行った。


さっきの姿…目が充血しまくって黒目の部分が赤くて…そして歯が尖ってて…。

なんで!?

どうして!?


その場にわたしはペタンと座り込んだ。

腰が抜けたかのように。
< 29 / 71 >

この作品をシェア

pagetop