A sweetheart is a ghost
床に座り込み、さっきから振え続けている携帯を震える手で手に取って見た。

【着信 雪子】


そうだ、雪子が潤一に気付いたからかも──…。

でも雪子のせいなんかじゃない。

潤一が見えたってわたしに言うのは普通だと思うし、他の人が雪子の立場でも言うと思う。

もちろん逆の立場だったらわたしも言う。

責めたりは出来ない。

でも…潤一との約束。

見えることは話しちゃいけない。

そう決めて電話に出た。


「もしもし…ゴメンネ?」


「あ……。いや。ねぇ、どういうこと?どうして潤一さんが!?」


いかにも動揺してますって話し方の雪子。

そりゃそうだよね。


「なんのこと?わたし何も…」


「嘘!!だって消えた瞬間璃那だって驚いてそして帰ったじゃない!!隠さなくたっていいよ。わたし実は昔からなの。見えるの。」


雪子が霊感が強いなんて初めて知った。

そういえばたまに上の空のときがあったっけ。


「知らないの。お願い、もう聞かないで。」


もう攻め立ててほしくなかったし…きっと雪子ならわかってくれる。

願いをこめて冷静に言い放った。

さっきまであんなに動揺してたのに。


「……──わかった。なにかあるんだね。じゃ聞かない。でも璃那、大丈夫?」


ゆっくりと言う雪子。

わかってくれてホッとする。

やっぱり友だちだし、わかるんだね。


「…多分大丈夫。ゴメンね、抜けて。楽しんで。ごめん切るね。また。」


「ちょっ──…」

何か言いかけてる雪子を無視して一方的に電話を切った。

そしてかかってこないように電源を切る。

だって誰かに優しい言葉かけられたらきっと涙が止まらない。
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