帽子を取ったら…
 誰にも見つからない所を探して見つけた場所は、離れた岩場である。


「…」


 志穂嬢は辺りに誰もいないのを自分の目で確かめた。


 輝人が話しかける。


「どうしたの?」


 志穂嬢は真剣な眼差しで輝人を見つめる。


「知りたい? 私が何故、帽子を取らないのか」


 思いがけない、志穂嬢の行動である。


「教えてくれるってワケ?」


「今ここで、帽子取ってもイイ」


「無理すんなよ。誰にも見られたくねーんだろう? 自分の頭の状態をよ



「私がどうして、帽子のままでいるのか? 輝人、分かるの?」


「大体、想像は付く」


「じゃあ、説明して」


「皮膚病か何かで、頭の毛の一部が抜け落ちている。或いは、一種のアレルギー症状のせいで帽子は取れない。その、どっちかだろう?」




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