帽子を取ったら…
 そこへ1人の女が志穂嬢の傍に歩み寄って来た。


 何と、藤野多美部長である。


 無表情のまま腕を組み、里奈の様子を見つめる。


 志穂嬢は部長が来ても動揺する事もなく、里奈を見つめるばかり。


 次の瞬間!


 髪の毛が抜け落ちた頭の表面と一体化した塊が、パックリと開いた!


 中から現れたのは、恐ろしい形相の鬼面…


 人面腫妖怪ヌメリガである。


 ギィイヤァァーッ!


 甲高い鳴き声を発したヌメリガ。


「今度は双木さんが、妖怪の犠牲になっちゃうんだ?」


 部長のクールな口調の質問に、志穂嬢は平然と言い放つ。


「私をずっと構って来てくれたけど、結局は私を馬鹿にしたのよ」


「そっかぁ」


「双木さんは部長の大事なアシスタントだったんでしょう?
 殺してしまうのは惜しくないですか?」


 タバコに火を付け、少し気取った仕草で吹かす部長。


「別に、何とも思ってないわね。 私も、双木さんが目障りだったから消えてくれた方が助かるのよね」

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