静かな海の兄き
肩を抱かれ

両親とは 反対側に案内された翔。

「宏史。
翔くんが来てくれたぞ。」

今にも泣き出しそうな声で

何も答えてはくれない

その“宏史”に語りかける沢渡氏

翔は

ゆっくりと

目を動かす…

そして…

「こんなの…
ありかよ…。」

父のはなしてくれた

双子の兄

そこに横たわる“遺体”の顔は

まぎれもなく

夢で会った

宏史だった…

「しかたなかったって…このことかよ?
会えてよかった…って…
そういうことかよ?

こんなのって…
…こんなのって
ありえねーよ!!」

最後の一言を

力いっぱい叫んだ翔。

もう

動かない宏史…

何も言わない宏史…

《翔。
お前に会えて よかったよ。》

宏史のその言葉と

優しい笑顔が

翔の中で

何度も繰り返しよみがえる…
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