静かな海の兄き
それから――


ずっと

気丈に振る舞っていた

宏史の母が

火葬場で

お棺に抱きつき

「焼かないで!!」



泣き叫び

騒然とした以外は

何事もなく

日々が過ぎていった…


そして―

翔は

夢の中で

宏史と来た海に

一人で来ていた…


「おばさんから聞いたよ。

救急車の中で

ずっと 俺の名前
呼んでくれてたって…」

波打ち際に座り

海を見つめて語る…


「最後に俺に言った言葉…」

《翔。
お前に会えて よかったよ。》

「あれ…
息を引き取る寸前に
言ったんだってね…。」

 静かだ…

波の音だけしか聞こえない…

「俺達
こっちに引越して来る事になったんだ…。

父さんと母さんが…」

“宏史の育ったところで 過ごしたい”

「って…」

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