先生と約束

『それじゃぁ始めに
このシートを人形の口に被せて
空気を吹き込んで下さい』


みんなそれぞれ解らないなりに
やり始めた。

私とペアになった男の子もぎこちないながらも一生懸命やってる。

私はそんな中ぼーっとしながら
みんなを眺めてた。

さぁ次交代して!
という先生の声でハッとし
ペアの子と交代した。

着々とみんなが作業し始めたころ
私はというと手を付けないまま
目の前にある人形をじーっと見つめたまま静止状態。



『…………』

『…………』

時間にすれば1分もたってなかったと思う。

『どうした?』

声のするほうを見ると先生が動かない私に気づいたのか
不思議そうな顔で私を見てた。

『…………』

隣を見ればさっきまでやってた男の子も
なかなか始めない私にそわそわしてた。



『…せ、せんせい。あの…』

『ん?』

『わたし、…無理です。…できません』

『…えっ?』

そのとき一斉にみんなが私達の方に視線をむけた。

うっ…どうしよ…
でもちゃんと言わなきゃ


『えーっと…なんていうか…
男の子とペアっていうのが
チョット無理っていうか…その…』


最後は注目を浴びてるのと
恥ずかしさでゴニョゴニョと篭った言い方になってしまった。


先生も何となく気づいてくれたのか

『あー…でもシート代えてるし、
ちゃんと消毒液で拭いてるから』

それでもできない?と聞かれ
無言で頭を縦に一回頷いた。



『先生、私があかりちゃんと変わります』


みずきちゃんが手を挙げて
先生に言ってから私と変わってくれた。






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