先生と約束

『…先生、前に行っ…』

『ダメ』

『…』


私が言い終わる前に、先生の声で遮られた

ちぇ、チョットぐらいいいじゃん。












『先生、聞いて!私、車校に来てから痩せたんだよ』



この貴重な時間を無言のまま終わらせるのは、もったいない。

だから最近の私を知ってもらいたくて報告した。

昼にたべるおにぎり一つでさえ、胸がいっぱいで喉を通らない。
いわゆる、こいわず…



『…恋患(こいわずら)い?』



ーえっ…それ、先生が言っちゃう?

今、自分で想ったことを先生に言われた

確かにそうだけど…先生に言われちゃうと何も言えなくなるじゃん。



『そ、そうだよ。…先生のこと考えてると胸が苦しくて食べれないんですっ!!』



この際、得意の開き直りだ。

勢いづけて言ったあと、ふいっと窓の外を眺めた。

この辺りは緑が多い。

今は竹林に囲まれた道を走ってる。
知らない道って新鮮だなーと思い耽(ふけ)ってると、フッと笑う声が聞こえた。

その声の主を見ると、
左手で口元を覆っている。



また、笑われた…





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