先生と約束
道路沿いに少し空いたスペースがある。
先生はそこへバスを停車した。
知らない土地だからバス乗り場なのかな、誰か乗る人がいるのかとキョロキョロ見回していると、先生が振り返った。
『写真撮らないの?』
と私のかばんを指差した。
『…えっいいの?』
誰か乗ってきて邪魔されるのかと落胆してた顔も、先生の一言でパアッと笑顔に変わった。
ガサガサとかばんの中を弄(まさぐ)り、目当ての物を出す。
まさか写真を撮るために車を停車してくれるなんて、嬉しすぎる。
運転席に座ってる先生と横並びになるように、前のめりになる。
少し体制がキツイがそんなことは気にしない。
だって先生とこんな近くにいることにドキドキして、少し気を緩めればニヤニヤしてしまいそうだ。
カメラを二人の前に構え、
シャッターを押そうとしたら、
不意に先生がこっちに振り返った。
振り返ったことで先生と私の距離は縮まり、どちらかが少しでも動けば当たってしまうほどの距離。
2人の視線が絡む。
見つめあったまま時間が過ぎる。
これほどまでにない心臓の動き。
こんな近くにいれば先生にも聞こえてるんじゃないかってぐらいどきどきしてる。
多分時間にすれば数秒。