初恋ディジー
“グロスぐらいはしていきなさい”
声をかけようとした時に由真ちゃんのさっきの言葉が頭を過ぎり、
彼の名前を呼ぶのを途中でやめた。
持っていた色つきリップを軽く塗り、大きく深呼吸すると一歩ずつ近寄っていく
。
「お……おはようございます……榛名くん」
少し震えた声で名前を呼ぶと、榛名くんは携帯に落としていた視線をあげた。
「……え?佐脇さん?」
目を丸くする榛名くんに、私は苦笑する。
「変だよね、やっぱり……」
「変じゃないよ! ……可愛い、と思う」
そう言った後、コホンと咳払いをして少しばかり逸らされた視線。