初恋ディジー

“グロスぐらいはしていきなさい”


声をかけようとした時に由真ちゃんのさっきの言葉が頭を過ぎり、
彼の名前を呼ぶのを途中でやめた。


持っていた色つきリップを軽く塗り、大きく深呼吸すると一歩ずつ近寄っていく



「お……おはようございます……榛名くん」


少し震えた声で名前を呼ぶと、榛名くんは携帯に落としていた視線をあげた。


「……え?佐脇さん?」


目を丸くする榛名くんに、私は苦笑する。


「変だよね、やっぱり……」


「変じゃないよ! ……可愛い、と思う」


そう言った後、コホンと咳払いをして少しばかり逸らされた視線。
< 188 / 393 >

この作品をシェア

pagetop