初恋ディジー

トイレから出て榛名くんが待つベンチに向かうと、知らない女の子が二人彼に話しかけていた。


『ヒマしてるんだけど、一緒に遊ばない?』


「いや、俺は……悪いけど彼女待ってるんで」


そう言って立ち上がった榛名くんは、トイレから出てきた私に気付き手を振った。


『うっそ、彼女ってマジじゃん』


女の子たちは諦めてその場から立ち去っていく。


「あー、ごめん。佐脇さんのこと、彼女とか言ったりして」


「う、ううん……私は別に気にしていないから」


――何て、嘘。


本当は榛名くんが嘘でも私のことを“彼女”って言ってくれたことが、少し嬉しかった。

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