初恋ディジー


化学担当の彼は少し薄汚れた白衣を纏(まと)い、眠たそうにひと欠伸して頭を軽く掻く。


「はい……日誌が残ってるので」


机の上に一度シャーペンを置いてそう答えると、

「あまり遅くなるなよ」

と言って先生は立ち去って行った。


私はまたシャーペンを手に握りしめ、日誌の空白部分を丁寧に埋めていった。


――それから数分が経った頃。


「……え?」


ふと外から聞こえてきた音に手が止まる。
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