初恋ディジー
「じゃあ今日は、このまま差して帰ろうか」
そう言うと、榛名くんは開いた傘を少しだけ私の方に傾けた。
「相合傘だけど相合傘だと思わなければいい」
「ふふっ、何それ」
小さく笑みを零しながら、傘の中へと入る。
「この様子だと直に止みそうな感じ……」
雨はシトシト降っているだけで、そこまで大粒ではない。
「天気予報ではただの通り雨だって言ってたしね」
「――あ!でも榛名くんと家の方向逆だ……」
「傘一つしかないから、ちゃんと家まで送り届けるよ。 ……多分その頃には雨も止むと思うし気にしないで」
「ありがとう」
お礼を言うと、肩を並べて駅方面へとゆっくり歩き出した。